【d!】シンデレラ♂を迎えに来ないでください (ページ10)

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Aは今、より一層意味の分からない状況に置かれている。
我が国の総統閣下が自分の肩をがっしりと掴んでいる。そして逃げられない。そして自分は女装している。

…いっそのこと気絶したい、と顔面蒼白のAは思っていた。

gr「あーあー、こちらグルッペン。侵入者の捕獲に成功したぞ！」

グルッペンが取り出した無線機に向かって誇らしげにそう言うと、一瞬間をおいて無線機から怒声に近い声が流れ出した。

ノイズが混じっているのと喋っている人間が多いので聞き取りにくいが、どうもグルッペンが会場から抜け出していることを咎められているらしい。多種多様な罵声が聞こえる。

そのせいだろう、即座にうんざりとした顔に変わったグルッペンはうるせ、と呟いてから無線機の電源を切ると、やけにニコニコ、いやニヤニヤした顔でAに話しかけた。

gr「いや～、せっかく俺が直接侵入者を捕らえたってのに冷たいね。あいつら」

その言葉は緊張と恐怖で肩を小刻みに震わせていたAには殆ど聞こえていなかった。

しかしただ一つの単語だけがかろうじて耳に引っ掛かり、Aは思わず青ざめた顔を上げ震える唇でなんとかグルッペンに問いかけた。

『え…？あの…しん、エ…？侵入者って』

gr「ン？だって侵入者？不審者？だろお前。ウチの警備体制をかいくぐって進入禁止エリアで散々暴れまわってくれたじゃないか」

グルッペンの放った「侵入者」という単語がどうやら自分を示すものだということにAは衝撃を隠しきれずにへなへなと地面に座り込んでうなだれた。

もう限界だ。そんな思いがAの頭を支配する。

たった数時間前まではただの一国民のよくいる美少年だったはずなのに…と、うなだれたままAは思いを馳せた。
いつのまにか女装させられて、痛くて、帰ろうとしただけなのに追いかけられて、捕まって……
しまいにはお偉いさんに楯突いた侵入者扱い(事実)だなんて…

Aにはそんなストレスは抱えきれるものではなかった。どんどん視界が滲んでいく。

gr「アレ？おーい」

『…に』

gr「あ？」

突然へたり込んでしまったAの様子を確認しようとしたグルッペンがAの呟きを聞き取れずに更に顔をAに近づけた瞬間、

『かえりたかっただけなのに"！！！なん"でじゃますん"だよ！！！！ゔわぁあああああ！！！！

突如としてAが勢い良く顔を上げ、大きな声で叫んだ。

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