【d!】シンデレラ♂を迎えに来ないでください (ページ9)

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暗い廊下に、Aの足音と荒い息の音だけが響いている。失った体力を回復することも忘れてただ走ること数分間。

『！…あった…出口…』

城へ入ってきた時にも見た正面玄関が見えた瞬間、安心からかAの体にどっと疲れが押し寄せる。
少し眩暈がしたAは呼吸を整えようと壁に体を預けた。

『気持ちわりぃ…』

いつの間にかドレスの下を伝っていくのが分かるほど汗をかいていたことに気付いたAは、自分の二の腕までを覆っていた手袋をするりと外した。
上品もクソもないとは思うが、貴族でもなければそもそも女ですらない。どうせ誰もいないし、もうどうでもいいやとその手袋で汗を拭った。

汗を拭い終わってから正面玄関へと向かう途中で、Aはふと気付いた。

あれ？そういえば手袋って最初の方外せなかったような…ということに。

そう、Aが着けていた手袋は確かに外すことはできなかったのだ。まるで肌の一部かのようにぴったりとくっついて、あんなにするりと外せるはずがなかった。

それはつまり。

魔法が解けようとしているということなのではないか？

そのことに気付いたAの背中をさっきとは違う汗が伝う。まずい。今ここで、こんな城の正面玄関で、もし全裸になってしまったら。

考えるだけでぞっとする。

Aは俄然足早になり、正面玄関から外へと飛び出した。ここから続く長い階段を下れば自分が住む世界へと帰れる。

『早く帰らないと…！！！』

「え、なんで？」

突如として耳元で聞こえた悪魔の声(バリトンボイス)。驚きのあまり立ち止まって何も言えないAの肩を何者かが掴んでゆっくりと振り向かせた。

「夜も更けて、全員酒も飲んで…これからが楽しい乱闘(パーティー)の時間なのに、なんで帰っちゃうんですかね」

あぁ、Aを最後に捕まえた男の正体は＿

『ぐ、グルッペン総統閣下…』

gr「誰かは知らんがなーんかさっきから面白いことやってくれてるじゃないか」

月明かりの下でギラギラと輝くその瞳は、まるで新しいおもちゃを手に入れた子供のような、狩りの前で昂る肉食獣のような、色々と不吉なものをAに感じさせた。

gr「まあもうちょっとでゾム先生とかロボロとか来るだろうしさ、帰るのはまだ待ってくれませんかね」

お嬢さん。そう言って、Aの肩を引き寄せた目の前の男はニヤリと笑った。