【d!】シンデレラ♂を迎えに来ないでください (ページ4)

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それまで余りにもその男の気配がなかったものだから、Aは自分がぶつかってしまったものが男であるということに気付くのに数秒はかかってしまった。

『え？あ、人…じゃなくてすみません』

Aとぶつかった男はフードを目深にかぶりその顔に暗く影を落とす男だった。廊下全体が薄暗いことも相まって、男の目元はほとんど見えない。
しかし、Aを無言で見下げるその男から途轍もない圧を感じてAは少し後ずさった。

『え、あの…それじゃ…すみませんでしたほんと』

zm「まてや」

『うわっ』

Aが軽く頭を下げてその場から逃げようとした瞬間、がっちりと手首を掴まれてAの肩が跳ねる。

力いっぱい抵抗しても振りほどけないほどに手首を掴まれ、まさか自分を襲う気ではないかとAの体が強張った。せめてもの抵抗としてキッと男を見つめる。

『なんですか』

zm「…君、怪我してるやろ」

一体何の用だと訊ねてみれば、男は数秒迷うような素振りを見せた後、ぼそりとそう呟いた。
まさかそんなことを言われるとは思いもしなかったAは少し力を抜いて男にこう言った。

『まぁ確かにしてますけど大した怪我じゃないです、あの、手離してもらえますか』

zm「…そうすか。因みになんでうろついてたんですか、この辺会場からも離れてんのに」

『いや…帰りたいと思ったんで…』

zm「ふーん」

いや「ふーん」じゃなくて、とツッコみたくなる気持ちをぐっと抑えてAは出来るだけこの怪しい男を刺激させないように再び男に手を離すように伝える。

『あの、もういいですか？早く帰りたいので…それに手首もちょっと痛いんです、離してください』

zm「えっ、す、すみません」

痛いと伝えた瞬間しどろもどろになり素直に手首を離したことに若干驚きつつ、Aはそれじゃ、と軽くお辞儀をして早足で男から遠ざかる。

一応怪我の心配もしてはいたしちょっとは紳士なのかもしれないし、出口まで案内でもしてもらおうかという考えがAの頭をよぎったが、あんな警戒心剥き出しの、しかも野郎と二人っきりというのも気まずい。
幸いまだ十二時までは時間があるし、ちょっとくらい迷っても大丈夫だろう。

今日はやけに変な奴に絡まれる凶日だとため息をつきながらAは再び歩き出した。