【d!】シンデレラ♂を迎えに来ないでください (ページ2)

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A・アイーシャはすとん、と中庭のベンチに腰をおろして小さくため息をついた。

『どうしよ…』

突然現れた狐面の魔法使いに女装させられて、カボチャが急にでっかくなったと思ったら、メルヘンな馬車に早変わり。
そのままあれよあれよとこんな立派なお城のパーティにまで来てしまった訳だが。

とりあえず今はダンスホールを抜け出して休憩中だ。

普段「貴族の女はドレス着て踊ってれば金持ちに貢いでもらえんだから気楽なもんだよな～」だなんて馬鹿にしていたが、
実際に着てみるとキツイし重いし痛いし。
馬鹿にしていたことを平謝りしたくなる苛酷さだ。

しかも謎の力で全然脱げない。

『なんとか町まで帰らないと…』

「いや～十二時までには解けると思うから！」とかなんとか言われたけど、逆に十二時までに町へ帰らなければ一体どうなるのかわからない。

もしかしたらいきなり全裸になっちゃうかもしれないし、なぜか今まで女の子だって思われてたけど男だとバレて即⭐︎処刑されちゃうかもしれない。

『はぁ…』

ガラスの靴も死ぬほど痛いし。何？ガラスの靴って。なぜかサイズはピッタリだし。
こんな靴擦れ＆ふとした拍子に割りそうランキング№ 1の靴でダンスなんかできるかボケ。

『ほんとにやだ…』

はぁ、ともう一度深いため息をついたAの耳に複数人の足音と話し声が聞こえた。

お偉いさん主催のパーティーで不満たらたらなのがバレては大変だ、とAは即座に澄ました顔をしてベンチに座り直す。

「…ん？あっ、おるやんけ人、ショッピ先行ってや」
「は？こんなとこでもビジネス陰キャ発動しないでもろていいすか大先生」
「え～？あの子？かわいいじゃんか」

たぶんあの子も休憩だから大丈夫やって、という会話が聞こえてくる。

Aにはそれ以上の会話は聞き取れなかったが、まあ大方殿方同士ナンパ報告会かなんかしていると検討をつけ、
別に自分が悪い方向に目立ってないようであれば関係ないか、とさっさと盗み聞きを切り上げて立ち上がった。

どのナイスガイがどこの誰それに目を付けてるなんてことを知るよりも、自分がこの城から脱出する手段を見つける方が今のAにとってはよほど有意義だった。

今は城の中庭で休憩中だ。この状況から外へ脱出するには＿

『やっぱり、ダンスホール抜けてくしかないのか…』